断腸亭料理日記2018

五反田・博多担々麺 梟(ふくろう)
〜ちょっと考察

7月17日(火)昼

こう毎日暑いと、なにを食べようか
思い浮かばずに、困ってしまう。

少し前にできた、オフィスそばのラーメンや。

一度入ったことがあるのだが、博多担々麺と
看板にある。

実はここは、この店になる前があって、汁なし担々麺の店
であった。
ここには書いたことはなかったと思うのだが、
びっくりするほどのことはないが、そこそこうまく、
近所なので多い時には一週間に一回はきていた。

辛さが選べたり、花椒(ホワシャオ)の香りが新鮮で
あったり。また、半ライスに生玉子一個もついていて、
うまい上に、お得感もあった。
まあ、近所の贔屓であった。

それが、昨年の後半閉店してしまった。
そこに居抜きで店を開いたのが、表題の博多担々麺[梟]
という店であった。

同じように、汁なしの担々麺がないかとのぞいてみた、
というわけである。

期待通り、汁なしはあって、熱盛ではなく冷やし、
花椒入り(らしきもの)を券売機で買った。

出てきたのがこれ。


麺が赤い。
唐辛子でも練り込んであるのか。

そしてキリっと冷えている。
これはうれしい。

肉味噌、花椒。
全体として、味のバランスはよい感じ。

食べ終わって「博多」と謳っている、とんこつの
風味というのか、味というのか、が、ほんのりと残る。
なかなかクセになる味であった。

さて。汁なし担々麺というメニューは、今、東京では定番に
なっているといってよいと思われる。

担々麺を看板にしているところには必ずある。

例えば、私がよく行く[阿吽](田原町)

汁なしを食べてはいないが、高輪台の[香家]
にもあった。

いつ頃だったか明確には覚えていないが、
数年前、それこそ湯島天神下[阿吽]が話題になった頃なのか、
東京ではちょいとしたブームであったのではなかろうか。
この時に、汁なしも定番化していた?。

まあ、そんなところだったのではなかろうか。

そんなことで、五反田のこの店の前の、
汁なし担々麺専門店も出てきていた、ということであったろう。

汁なし担々麺というのは、個人的には出てきた当初は
今一つピンとこなかった。

そもそも担々麺とは、日本(東京?)ではという限定付き
であるが、甜麺醤などで甘めに味付けされた豚挽き肉に
練り胡麻、芝麻醤が入ったしょうゆ味のスープ、
ラー油、さらに花椒を効かせた、中華麺と、定義が
できよう。

ここからスープがなくなったものを担々麺というのか、が
私自身が疑問でピンとこなかったのである。

だがまあ、食べてみればうまい。

元来、中華ではジャージャー麺のような汁なしそば
というジャンルは大きな部分を占めていた。
中国本土では担々麺でさえ、ほぼラー油をぶっかけただけ
という担々麺も存在している。(北京の屋台で食べた記憶がある。)

だが、我が国ではジャージャー麺のような汁なしそばは
長く定着してこなかった。
当時は、日本人はやっぱり汁がないとだめなんだ、と
考えてもいたが、今からえるとこれはあてはまらなかろう。
私自身を振り返ってみても、ジャージャー麺は
あまり存在感のあるものとは感じていなかった。

もしかすると、定着する程度に、うまいものでは
なかったということかもしれない。

それが変わったきっかけは、東京では油そばの登場ではなかった
と思うのである。(20〜25年前であったか。)
これも私は、登場当時は、スープもなく、具も少ない、
こんなものが食えるのか、と疑問に思ったがやはり左にあらず。
食べればうまかった。
これは、東京のラーメン店の店主達の新しいものを
生み出そうという情熱と、非凡なる新しい味の設計能力の
賜物であったろう。(それだけ東京のラーメン店のレベルは
私は高いと思うのである。)
今、油そばはそう大きなジャンルにはなっていないが、
あるところにはあって、私も食べることがあって
ある程度定着しているといってよいと思われる。

和えそばと言い換えた方がよいかもしれぬが、
油そばの定着という下地があって、今の汁なし担々麺の
定着があるといえるのではなかろうか。

さてさて。

そんなことで、今回の博多担々麺の[梟]という店。

ちょっと調べてみると、この店は博多に本店があって、人気
とのこと。博多ではこの店以外にも担々麺は一定の
人気ラーメンで、この店以外にも看板にしているところは
少なからずあるようである。

この店には、汁なしではない担々麺がもちろんあって、
そちらがメイン。実際に食べたことがあるのだが、
スープのベースが博多のとんこつで、それを担々麺に
しました、ということなのだと思うが、担々麺としては
特にピンとこなかった。(もちろん普通にうまいが。)
おそらく多くの方は賛同されると思われる。

むずかしいものである。
博多で人気があっても、必ずしも東京では、ということ
なのであろう。

今回食べた汁なしは、うまいと思ったし、
これであれば、例えば電車賃をかけて食べにくる
価値があり、あるいは、数週間に一度食べてもよいと思う。
つまり汁なし担々麺としてはとんこつの風味が
成功しており、他にないうまさになっていたと
思われる。





断腸亭料理日記トップ|2004リスト1|2004リスト2|2004リスト3|2004リスト4"2004 リスト5"

2004 リスト6"2004リスト7|2004 リスト8|2004 リスト9"2004 リスト10"

2004 リスト11|2004 リスト12"2005 リスト13"2005 リスト14|2005 リスト15

2005 リスト16|2005 リスト17"2005 リスト18|2005 リスト19" 2005 リスト20"

2005 リスト21|2006 1月|2006 2月|2006 3月|2006 4月|2006 5月|2006 6月

2006 7月 |2006 8月 |2006 9月 |2006 10月 |2006 11月 |2006 12月

2007 1月 |2007 2月 |2007 3月|2007 4月|2007 5月|2007 6月|2007 7月"

2007 8月|2007 9月|2007 10月|2007 11月|2007 12月|2008 1月|2008 2月

2008 3月|2008 4月|2008 5月|2008 6月|2008 7月|2008 8月|2008 9月

2008 10月|2008 11月|2008 12月|2009 1月|2009 2月|2009 3月|2009 4月"

2009 5月|2009 6月|2009 7月|2009 8月|2009 9月|2009 10月|2009 11月|2009 12月"

2010 1月|2010 2月|2010 3月|2010 4月|2010 5月|2010 6月|2010 7月"

2010 8月|2010 9月|2010 10月|2010 11月|2011 12月|2011 1月|2011 2月"

2011 3月|2011 4月|2011 5月|2011 6月|2011 7月|2011 8月|2011 9月"

2011 10月|2011 11月|2011 12月|2012 1月|2012 2月|2012 3月|2012 4月"

2012 5月|2012 6月|2012 7月|2012 8月" 2012 9月" 2012 10月" 2012 11月"

2012 12月|2013 1月|2013 2月|2013 3月" 2013 4月|2013 5月|2013 6月"

2013 7月|2013 8月|2013 9月" 2013 10月" 2013 11月" 2013 12月" 2014 1月

2014 2月|2014 3月|2014 4月|2014 5月|2014 6月|2014 7月|2014 8月|2014 9月"

2014 10月|2014 11月|2014 12月|2015 1月"2015 2月|2015 3月|2015 4月"

2015 5月|2015 6月|2015 7月|2015 8月|2015 9月|2015 10月|2015 11月"

2015 12月|2016 1月|2016 2月|2016 3月|2016 4月|2016 5月|2016 6月"

2016 7月" 2016 8月" 2016 9月" 2016 10月" 2016 11月" 2016 12月" 2017 1月"

2017 2月|2017 3月|2017 4月|2017 5月|2017 6月|2017 7月|2017 8月|2017 9月|

2017 10月|2017 11月|2017 12月|2018 1月|2018 2月|2018 3月|2018 4月|

2018 5月|2018 6月|2018 7月|

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2018