断腸亭料理日記2021

うなぎ駒形前川

3916号

夏休みをいただいたが、今日から再開。

世の中の夏休みは、もう一週前であったのか。
まあ、私などは毎日が休みなので、休んでも
休まなくても似たようなものなのだが、
それでもリズムを付けたくなる。

休みの間は、西日本の大雨、こちらもずっと
雨であった。そのまま、秋になるのかと思うと
予報通りまた、暑さが帰ってきた。
パラリンピックが始まるが、コロナの拡大は
さらに止まっていない。
身を慎み、通りすぎるまでもう少し辛抱しなくては
いけない。
この一週間もそうであったが、もうずっと夜、
外で食べるのを控えている。
まあ、仕方あるまい。
ノンアルで食べても、やはりおもしろくないし、
リスクは避けるべきであろう。
仕事を辞めてから、ほぼ人と会わない日々が始まったが、
これは不思議と、まったく苦ではない。
コロナの世になってもそれが、継続しているだけ
なので、まあ、なんということもないのだが。

ともあれ、こんな時期、他愛もない文章だが、
引き続き、お付き合いいただければ幸いである。

ということで休み中、食べたもの。

うなぎ駒形前川・持ち帰り

8月12日(木)第二食

西日本の雨、こちらも一日曇り。
だがやっぱり、そこそこ暑い。

うなぎでも、食べるか。

うなぎというのは、東京人にとってはやはり、
特別な食べ物、で、ある。

江戸落語にもたくさん出てくる。
「素人鰻」「鰻の幇間」はうなぎやそのものが
噺の舞台。「子別れ」は大切なクライマックスがうなぎや。
「包丁」も最初の打ち合わせの舞台がうなぎや。
江戸からのご馳走。
名古屋など中部、関西、四国、九州でも名物として
食べられているが、江戸・東京の伝統食といってよい
だろう。

背開きにして、蒸す。
中部や西日本とは違う調理法。

その昔は、開かず串に刺して焼き、山椒味噌を塗って
屋台で売るものであったという。
串に刺した姿が植物の蒲(がま)の穂に似ているの、
蒲焼と呼ばれるようになったよう。
だが、これは脂が多く労働者の食べるものであったよう。

これが江戸では、流山、銚子などで生まれた
濃口しょうゆによって、今の開いて蒸した蒲焼に
なった。

今の蒲焼はほぼ養殖である。
養殖が始まったのは、明治初期、東京深川からという。

それ以前というのはもちろん、皆天然で、現代と比べると
高騰したとはいえ、感覚的にはもっと高価な食べ物であったと
思われる。
うまいが、高価で特別な食い物。
だが、いや、だからこそ庶民でもたまの贅沢として、
愛されてきた。
だから、落語にも多く登場する。

地元浅草にも江戸創業のうなぎやが多数ある。

やはり、特別な幸せを与えてくれる食い物である。

ご近所、小島町[やしま]も夏休み。
そこで、駒形[前川]の持ち帰り

にしよう。
やっぱり、店で食べたいが致し方ない。

TELをして、うな重、白焼きを、
夕方取りに行く旨、予約。

白焼きには、生わさびがほしい。
切れているので、購入。

今日は、買い物も手配も内儀(かみ)さん。

夜。

包み。

紙の紐が、歌舞伎の定式幕の三色。

白焼き。

わさびもおろした。

白焼きというのは、贅沢かつ、乙なものである。

他の地方は知らぬが、浅草に限らず東京のそこそこ以上の
うなぎやで食べれば、白焼きは格別にうまい。
だめなのは生ぐさいもの。
たれがないので、こうなりやすかろう。
むろん、こういうことは、一切ない。
あまり出ないところでは、白焼きの調理法に熟達していない
のかもしれぬ。

白焼きをわさびしょうゆで食べるのがうまい、
というのは、随分前だが、東京生まれの会社の先輩が
言っていた。
いつ頃からなのであろうか。
東京でうなぎ白焼きが、こういうポジションになったのは。
やはり以前は、東京のいわゆる“ご通家(つうか)”が
食べる、知る人ぞ知るものであったのだと思われるが。

うな重弁当。

奈良漬け付き。

うなぎ蒲焼には奈良漬けが付きもの。
子供の頃、味が濃く奈良漬け自体あまり好きなものではなく、
うなぎに付いている意味もよくわからなかった。
さっぱりする、などと説明されるが、濃い蒲焼のたれに
味の濃い奈良漬けというのは、さっぱりする、とも
思われない。
東京ではそう古い習慣ではないのではなかろうか。
落語のうなぎやに出てくるのは、奈良漬けよりも
お新香の方が多いように思う。
だが、最近になって、濃いものに濃いものだが、
この組み合わせに慣れてきた。やっぱり一緒にあれば
愉しい、と。

ともあれ、うな重、うまかった。

ご馳走様でした。
店で食べられる日をたのしみに待とう。


前川

台東区駒形2-1-29
03-3841-6314

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、簡単な自己紹介をお願いいたしております。
匿名はお控えください。

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2021