断腸亭料理日記2022

浅草・弁天山美家古寿司 その2

4076号

引き続き、弁天山[美家古寿司]。

昨日は、つまみ二品といか、白身、光物まで。

光物でもやはり小肌であろう。
鯵でも鯖でも鰯でも基本光物は皮をむくが
小肌はなぜか皮をむかない。
皮をむいたものを食べたことはないので
味はわからない。逆に鯖や鯵の皮をむかないで
食べたことはないので、これもわからない。

小肌というのは、この銀に濃い藍の斑点が美しい。
皮をむくのがむずかしいのかもしれない。
また、皮のままでも問題なくうまいので、むかない
のかもしれない。
江戸前鮨らしい粋な姿。
店によっては、浅く〆るところもあるが、やはり
きちんと〆たものの方がうまかろう。
ここのものは酸っぱすぎぬ、よい〆具合。

にぎらずに、〆たものをそのまま食べる場合も
あるかもしれぬが、やはり酢飯とともににぎって
うまいのが小肌であろう。
私はまずそのまま食べることはない。
にぎり鮨にする魚介類の多くは、酢飯とにぎる
ことによってうまみ、アミノ酸が増す。
もともと押し寿司からにぎりずしに発展したわけだが、
押して時間をかけることでうま味を増す。
即席でもにぎるだけで味が変わるのがにぎりずし、
なのである。にぎりずしのマジックである。
従って、酢飯はある程度のボリュームが必要。
東京でも酢飯から大きくねたをはみ出してにぎる
ところがあるがあれはいけない。大きなねたが
よければ刺身で食えばよい。

ともあれ、小肌のにぎり、
押しも押されぬ江戸前鮨の真打である。

次は、まぐろのづけ。

本来は、脂のない赤身をするものだが、
このところ、づけ、というと中とろのづけを
にぎってくれる。
これがまた、格別にうまい。

江戸前中期、まぐろというのは、庶民でもあまり食べるものでは
なかった。白身が上とされ赤く、脂も多いので下魚と
言われていたから、と説明がされるがちょいと違っていよう。
そもそも江戸期、まぐろというのは、組織的には獲っていなかった。
鰹は江戸っ子に人気で、駿河あたりからも、三丁櫓など
といって、高速の舟を仕立てて江戸まで運んだ。
鰹も足は速いが、まぐろというのも、足が速い。すぐに
食べられなくなる。まれにまぐろが大量に獲れてしまい、
魚河岸にあがったことが記録に残っている。大きいので
売りさばくのもたいへんであったろう。落語に「ねぎまの殿様」と
いうのがある。殿様が屋台のねぎま鍋で燗酒をやる、とまあ、
「目黒の秋刀魚」と同工異曲の噺。ねぎま鍋はねぎとまぐろを
しょうゆで煮た鍋である。こういう大量にあがった時の食べ方で
あったのであろう。また、塩漬けにもしており、長屋住まいの
庶民の食べるものであったよう。
産地ではいざ知らず江戸では刺身ではとても食べられないもの
であった。これが江戸後期天保の頃、馬喰町の鮨やが、
生のまぐろをしょうゆに漬けるということを思い付き、
当たり、一般化した。これがヅケ。
2017年

さて、次は、海老。

頭も残した立派な海老。
さいまき海老、これは少し大きいが小型の車海老。

内儀(かみ)さんの希望で、おぼろをはさんでもらう。

ゆで立てをにぎるところもあり、これが最もうまい
とは思われるが、ここは甘酢漬けの江戸前仕事。
それでもぷりぷりでうまい。

貝を二つ、ほっきと平貝。

ほっき。

これは生。

そして、平貝。

比較的、薄めに切っている。
貝では最も好みである。

そろそろ終盤。
穴子とかんぴょう巻さび入り。

穴子は一度炙るので、海苔巻からきた。

だれが思い付いたのであろう、かんぴょう巻に
わさびを入れるのを。
うまいもんである。

そして、穴子。

なかなかきれいである。
白く煮たもの。
甘いたれ付き。香ばしく、うまい。

最近、自分では煮るが、あまり外では食べなくなった。
なぜであろうか。
穴子にたどり着く前に、腹が一杯になってしまうから、
であろうか。

内儀さんの注文で玉子。

あまりにも内儀さんがおぼろが好きなので、
玉子にも掛けてくれた。

芝海老と教えてくれた。
こうしてみると思ったより水分がある。
自分で初めて作ってみたが、もう少し水分を
飛ばしていた。

玉子焼きも江戸前仕事。
玉子が貴重であったので、嵩増(かさま)しのため、
やっぱり海老や白身のすり身を入れていた。
その名残である。
いわゆる出汁巻きの玉子焼きもよいが、
これはこれで、カステラのようでやっぱり
うまい。

以上。

勘定は二人で、ビール二本込み、
24,420円也。
まあ、こんなものであろう。

ご馳走様でした。
今日もうまかったです。

 


弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

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