断腸亭料理日記2019

小肌とやりいかのにぎり鮨 その2

引き続き、小肌とやりいかのにぎり鮨。

小肌は酢からあげて、乾かし中。
飯は炊き上がり待ち。

茹であがったやりいか。

江戸前にぎり鮨のいかは、煮いかという。

やりいか、するめ。やりいかが多いと思うが
[弁天山美家古]などはするめだった。

プロの仕事は、赤い皮を残してあるのだが、茹でた時に
半分以上が取れてしまう。
なにか技があるのであろうか。

ともあれ。

飯が炊きあがるまでに、鮨酢の用意。
一合分、25cc。
塩を少しとみりんを少し。

飯台を洗って用意。

炊飯器が切れる。

早く、酢飯づくりに進みたいのだが、ここで慌ててはいけない。
むろん、蒸らし時間を取らねばならない。

7〜8分。タイマーで計る。

OK。

二合炊いているので、ぴったり半分をしゃ文字で飯台へ。

用意した鮨酢を全体にかけまわし、すぐにしゃ文字で
飯を切りながら全体に行き渡らせる。

この作業はとにかく手早く。
飯粒をつぶしてしまうのにも気を付けなければいけない。

全体に行き渡ったら飯台の底全体に広げて、そのまま置く。
団扇であおいだりはしない。

一合ばかりでは、温度が簡単に下がってしまう。

酢飯というのは、炊き上がったばかりの熱い飯の温度で
酢の水分を飛ばし、ネバネバした状態から飯の表面を固め、
パラっとした飯粒にする、というメカニズムである。
したがって、酢の水分を飛ばせるだけの熱量がない飯では
酢飯にはならないということになる。

季節によってもむろん違う。
今のような寒い時期には飯はすぐに冷めてしまう。
とにかく手早く。

飯に酢が行き渡れば手を触れずに置く。
絶対に手を出してはいけない。
ネバネバした表面が落ち着くのをそっと待つ時間である。

ここも7〜8分。
やはり、タイマーで計る。

冷めればよい、といって、完全に、例えば常温まで
下がってしまえばよいか、というとそうではない。

常温に冷めてパラパラ、飯粒の表面が完全に固まった状態では
にぎり飯もそうであろうし、にぎっても形にしずらい。

プロは出来上がった酢飯を保温すらしているのを
ご存知であろうか。適温を保つ必要があるでのある。
今は保温機能のあるジャーに入れたり、古くは藁櫃(わらびつ)と
呼ばれる藁で編んだもので覆われた、木の桶のお櫃(ひつ)に入れた。
今も江戸前を標榜するところはこれを使っているところは
少なくない。

冷ましている間に、種の用意。

小肌はこの大きさだと半身でにぎり一つ分。
半分に切って、頭の部分に鰭の付け根が残っているので
これを切る。
プロは小肌には、にぎってきれいに見えるいろいろな
技がある。切れ目を入れてひねったり。だがもちろん、トウシロウの
私にはわからないので、中央部分、斜めに二本の切れ目を入れてみる。

いかは一つ分と思われる形に切っておく。
わさびはチューブだが、用意。

いかのたれもできている。

タイマーが鳴って、待ち時間終了。
酢飯の表面は、ネバネバは落ち着いて、そこそこ
よい感じに光っている。(そこそこ、である。)

小肌からにぎる。

種の裏にわさびをぬってスタンバイ。
両手を水道で濡らす。
一つ分と思われる酢飯を左手に取る。
左手の中で形を作る。
種を右手で取り、左手のにぎったものにのせ、
右手の人差し指と中指の二本で押す。
ひっくり返してもう一回。この時に上下、親指側と
小指側もにぎりが尖らないように気を付ける。

もちろん自己流。
最初はまったく形にならなかった。
特に、今も多少はあるが、にぎりの表面が凸凹、
飯粒がはみ出していたり。

なん回かにぎっているうちにやっと
なんとか食べられる形になってきたところである。

一先ず小肌四つ。

真っすぐ立たずに斜めになったり、まばまだ、不格好。

やりいか三つ。たれもぬる。

不格好の上に種の形が今一つ。
どう切ればよいのか。

食べる。

小肌の〆具合は、そこそこよさそう。
お気づきかどうかわからぬが、にぎりの一つは
今の東京の鮨やのにぎりの大きさと比べると、そこそこ大きめ。
なんだか飯の量が多い。
ふんわりにぎる、など、夢のまた夢ではある。

いかは形はともかく、味は、まあそれなり。

課題は山ほどある。

だが。

十分に食えるものができてはいる。

うちでこの江戸前にぎりが食べられるのは、
ありがたいこと、ではある。

 

 

 

 

 

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