断腸亭料理日記2023

練塀町のこと その1〜上等カレー・秋葉原店

4327号

4月24日(月)第一食

さて、秋葉原にある[上等カレー]。

好きで、時たま食べにくる。
大阪が本拠。食べるのはカツカレー、で、ある。

場所は、秋葉原の中央通り沿い。
ドンキホーテの一つ北側の通りの角。

今回は少し、この東側界隈について書いてみたい。

現代の地図

秋葉原、この界隈も大きく変わった。

電気街でもあったが、以前は青果の神田市場が
ここにあった。今の大田市場に移転したのが、1989年
(平成元年)で、もう30年以上前になる。
こんなところに青果市場があったことを憶えている人も
もうそう多くはないかもしれない。
(青果市場はさらに前がある。
ここへは関東大震災後に移転してきている。
その前は、江戸期から今の神田駅西北側の
神田多町にあった。 詳しくはこちらをご参照。

移転した後は、線路の両側にオフィスビルが
なん本も建ち、JR高架下はショッピングモール
のようなものができたり。
電気街は、オタクの皆さんの街に変貌している。
外国人観光客もたくさん訪れている。

が、今回書きたいのは、表題の練塀町のこと。
練塀は、ネリベイと読む。
あまり知っている人も少ないのではなかろうか。
それで書いてみたい。

上の地図にマークを入れたが、今、千代田区
神田練塀町という町名になっている。

練塀町、なかなか趣きのある町名ではないか。

線路の東側、いや、正確には線路まで練塀町か。
東側はやはり大きなオフィスビルがなん本も建つ、
南北に長い町である。

ここで、昔の地図を出してみよう。

江戸

西に下谷御成街道とあるのが、今の中央通り。
そして、北に今の蔵前橋通りにあたる通りが同じ場所を
通っている。
一番東が、今の昭和通りにあたる通りで、地図には
この通り御徒町と云(い)う、とある。
このあたりまで御徒町といっていたのがわかる。

そして、その一本西に。下谷練塀小路、というのが
見える。これが、今の神田練塀町の由来。
ただ、ここで「下谷」と頭に付いていることを
憶えていていただきたい。ここ、下谷であった
のである。
練塀小路は、比較的小さな幕臣の屋敷が並んでいる。

そもそも練塀というのはなにか。
武家屋敷などの塀でよく使われたもの。
練った土と黒い瓦を交互に積み重ねたもの。
今でも古いお寺などに残っているのを見る
ことができる。この界隈、武家屋敷街で
きれいな練塀の屋敷があったのが由来とも。

練塀町というとひょっとすると、歌舞伎好きには
思い当たられる方もあるのではなかろうか。

「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」
河竹黙阿弥翁作、初演は明治14年(1881年)。
俗に「河内山と直侍」。

半分は、御数寄屋坊主、河内山宗春(こうちやま
そうしゅん)の強請(ゆすり)の話。
御数寄屋坊主というのは、江戸城に勤めるいわゆる
茶坊主。城に出仕している大名らの身の回りの世話など
雑用を務める幕臣。

もう半分が私が毎度書いている、雪の入谷のそばや
が登場する直次郎・直侍が主人公の話。

この河内山宗春の住まいがこの下谷練塀小路、
という設定であった。
私も、作品中でも河内山自身が、練塀小路に住んでいると
名乗るので、妙に印象に残っていた。

この御数寄屋坊主河内山宗春の話は、元来は歌舞伎
以前に、講談の「天保六花撰(てんぽうろっかせん)」
という続き物の話で人気のものであった。
河内山は実在の人物で、不良幕臣といってよいだろう。
捕まり獄死している。

悪人の話ではあるが痛快で、時に弱者を
助けてしまったり、、。

河内山宗春は歌舞伎以後も芝居、映画にもなん回も
なり、さらにTVドラマにもなり、まあ、誰もが
知っている物語であった。当然、下谷練塀小路と
いう地名も皆に知られていたといってよろしかろう。

私が知っているのは、子供の頃、NHKでこの
河内山も登場する「天保六花撰」をネタもとにした
コメディー時代劇「天下御免(堂々)」 (ウィキ
というのをやっていた。かなりハチャメチャな作り
であったと思うが、おもしろかった。
同世代の方でも覚えておられる方は少ないかもしれぬ。

このあたりが最後かもしれぬが、戦後も
河内山の登場する話は作られていたのである。

さて、そんな御数寄屋坊主河内山宗春とともに
人口に膾炙した、江戸期に下谷練塀小路と
呼ばれたところは明治以降どうなったのか。

 

つづく

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、バックグラウンドなど簡単な自己紹介を
お願いいたしております。なき場合のコメントはできません。

 

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月 | 2021 9月 | 2021 10月 | 2021 11月 | 2021 12月 | 2022 1月 | 2022 2月 | 2022 3月 |

2022 4月 | 2022 5月 | 2022 6月 | 2022 7月 | 2022 8月 | 2022 9月 | 2022 10月 |

2022 11月 | 2022 12月 | 2023 1月 | 2023 2月 | 2023 3月 | 2023 4月 |

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2023