断腸亭料理日記2023

上野・とんかつ・蓬莱屋

4374号

7月11日(火)夜

さて。

先日、丸ビルまで福井ソースかつ丼を
食べに行った。

福井のソースかつ丼のカツは、なぜかヒレのスライス
と、決まっているよう。

全国のソースかつ丼が皆、ヒレ、ということは
ないのであろうが、なぜか、福井はヒレ。
福井のソースかつ丼をすべて食べたわけではないので
すべからく、かどうかはわからぬが。

あれは、スライスといってよいほど薄い
ひれかつなのだが、ともあれ、ちょいと、
ひれかつが食べたくなった。

とんかつやで私は、ほぼロースしか食べない。
豚肉の魅力はやっぱり、脂身。
あの脂身がうまい、と。
同感していただける方も多いのではなかろうか。

ほぼ、そういうわけで食べないのだが、
つい最近、ひれかつもうまいじゃないか、と
いうことに、遅ればせながら齢(よわい)六十に
なって気が付いた。

それは、取りも直さず上野の大老舗[蓬莱屋]
のおかげ。
[蓬莱屋]には、ロースは置いていない。

[蓬莱屋]は大正元年(1912年)創業。
今年で、なんと111年!。
とんかつが洋食やから独立した頃と考えている。
当初は、松坂屋の裏で屋台から、と、聞く。
とんかつや、草創期。

また[蓬莱屋]といえば、黒沢以前の日本映画を
代表する、世界的映画監督小津安二郎贔屓の店、
というのも知られている。

小津監督は、ロースではなくヒレがお好みで
あったのであろう。

ロースを頑(かたく)なに揚げないというのは、
むろん、理由があるのであろう。

ウィキ

には、どなたかがこの店のページを作っている。
老舗とはいえ個人経営の飲食店を書いているのは
珍しかろう。よほどのマニアか、関係者の方か。

ともあれ、それによれば、創業の頃はロースよりも
ヒレの方が格段に安く、やはり当時も豚のカツレツ
といえば、ロースが決まりであったよう。
それでお金がなく、屋台から始めた創業者はロースではなく、
安かったヒレを使って、商売を始めた、という。

以来、豚ヒレのかつれつに、専念している、と。

なるほど。

ちょっと久しぶり。

調べると、今、ウイークデーは昼営業のみのよう。
コロナ禍の影響で、あろうか。

14時までなので、13時すぎに到着。

カウンターもそこそこ埋まっている。
やはり、高年齢、私よりずっと上、の男性ばかり。

右側の一番奥。

この時刻だが、やっぱりビール。
エビスの中瓶。

お通しは、ひたし豆。
乙であり、うまい。

いつもここはこれ。
一貫している。

このご近所の[ぽん多本家]は多少のバリエーション
があるのだが、いつもうまい。

一貫していてもよいし、どちらでもよいのだが、
とりあえず出して置け、的なものでないのが
よろしい。

ひれかつとご飯、味噌汁もきた。

切り口。

肉のうまみ、というのをしっかり味わうには、
やはり、ひれ、である。

この太さだが、中はしっとり柔らか。

揚げ色は一般に比べると濃い。
油温の違う油で二度揚げしているようで、
流石の、老舗の腕。

目の前の調理場は二人。
顔が似ているので親子であろうか。
だが、揚げているのはお若く見える方。
年嵩の方の方が、揚がったかつを切っているのだが、
この切る時の集中している様子が印象的。

いつも、ここではカウンター上には塩は置かれていないので
もらうのだが、今日はそのまま食べてみた。
塩は、あってもよいが、なしでもOK。
十二分に、うまい。

味噌汁。
隠元だが、お椀ではなく、なぜ、この小さな
そば猪口のような陶器の器、なのであろうか。
ヒレしか出さぬのと同様に、いずれ意味がある
のであろう。

飯も食って、腹一杯。

うまかった、うまかった。

ご馳走様でした。

 

蓬莱屋

台東区上野3−28−5
03−3831−5783

 

 

 

 

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